前回は、米澤選手にQ&Aをお願いいたしましたが、今回は、その中から保険について取り上げてみたいと思います。

 

【Q.03】万が一に備えて、生命保険・医療保険・損害保険等、何らかの民間生命保険に加入していますか?
 ・未加入です。プロボクサーという事で民間保険を断られた経緯があります。

 

 

 一般の人には、あまり知られておりませんが、民間の保険会社は加入者を選択します。保険会社は収益事業として保険を取り扱っておりますので、保険を運営するにあたり「収益が損なわれるような要素」は、排除しようとするのです。その「収益が損なわれるような要素」の代表例は、既に病気をしている人や、危険な職業に就いている人です。

 

 

 なぜ、このような人たちを排除しようとするのかというと、このような人たちを保険に加入させてしまうと、将来の保険金支払いの可能性が高くなってしまうからです(保険金の支払いが増えることは、保険会社とって収益悪化要因になります)。そこで、保険会社は加入の際に、「告知義務」といって健康状態や職業を告知させたり、医師による健康診断を義務付け、加入段階で「収益が損なわれるような要素」を極力排除しようとするのです。なお、保険加入でいう危険な職業というものは、プロボクサー、F1レーサー、プロレスラー、登山家、競馬騎手等があります。

 

 

 そこで、私が、複数の生命保険会社に直接電話し、「プロボクサーは、保険に加入できますか?」と、ずばり聞いてみました。

 

 

 ●N生命…加入できるが保険金額に制限あります。
 ●L生命…職業による加入制限はありませんが、トータル的に判断させていただきます
 ●P生命…3,000万円までなら制限無で加入できます。それを超える場合は、制限が入る場合があります。
 ●K生命…職業による加入制限はありません。

 

 

 やはりプロボクサーという職業は、「危険的職業」ということで、加入による条件・制限がある保険会社が多いようです。そして、その条件・制限は、保険会社によって様々というのが現実です。しかし、絶対に加入できない…という状況ではありませんので、どうしても生命保険に加入したい!ということであれば、何社かに電話して、個別に相談してみることをお勧めいたします。

プロボクサー・米澤重隆選手 練習風景1

 

 

 さらに、今回調べてみると、日本プロボクシング協会が独自に選手の保障を行っていることが分かりました。コミッションルール第41条に以下のように規定されております。

 

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第41条
ボクサーは、試合報酬を受取ると同時に試合報酬全額の3パーセントを健康管理基金としてJBCへ拠出しなければならない。
なお、日本へ来征した外国人ボクサーについても健康管理基金への拠出が義務づけられる。
拠出基準は別途定めによる。基金は試合中の事故に限り診療契約に基づいてJBCから支払われる。
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 ということで、プロボクシング界では、選手達はファイトマネーの3%が徴収され、試合中のけがや、試合のダメージにより死亡した場合、「健康管理基金」から保障がうけられる仕組みがあるようです。その保障内容は、死亡及び脳内出血の場合は、1,000万円前後、ケガの場合は、健康保険(国民健康保険)をつかって負担した自己負担分の医療費が、後日申請することにより支給されるとのことです。しかし、そのためには、試合後のメディカルチェック時に、はっきりと体の異常部分を申告しておかなければならないそうです。申告せずに治療した場合は、治療費の支給はないということですので、試合後はドクターに、異常部分をしっかりと申告しておいた方が良さそうですね。

 

 

 さらに、ボクシングジムによっては、生命保険会社と提携し、所属選手に対して独自の保障を行っているジムもあるようです。したがって、プロボクサーが保険を考える場合、やはり、まず日本プロボクシング協会の「健康管理基金」の保障内容、所属ジムの独自の保障の有無を確認する必要があります。ちなみに、米澤選手の所属している青木ボクシングジムさんは、独自の保障があるのでしょうか?また、日本のプロボクサー選手の中で、この保障内容をきちんと知っている選手はどの位いるのでしょうか?これは、とても重要なことだと思います。

 

 

 そして、保険を考える上で大切なことは、「そもそも、保険は何のために加入するのか?」ということです。米澤選手は、過去に一度、生命保険の加入を検討したことがあるようですが、そもそも生命保険は必要なのでしょうか?

 

 

 

 

2012年02月17日(金)
FP社会保険労務士事務所 柔コンサルティング
代表 平野 厚雄