今回の取材の中で、長谷川選手がプロ格闘家としてとても重要なことが1つある!と強調されていたことがあります。それは、「自が試合をするときに、チケットをどれだけ買ってもらえるか?」ということでした。

 

 

 小中規模の興業の場合、主催者は、出場選手に何を期待しているかというと2点あると考えられます。1点目は、その選手の強さや観客を沸かせる試合をしてくれるということ、つまり格闘家としての「強さ」です。そして、もう1点は、その選手がどのくらいチケットをさばいてくれるのか(売ってくれるのか)?という「チケット販売能力」です。

 

 

 例えば、どちらも同じくらいの強さのA選手とB選手がいて、A選手はチケットを10枚しか売ってくれそうにない、一方、Bさんは、チケットを100 枚売ってくれそうだ・・・という話になった場合、主催者はB選手にオファーするということです。もちろん、絶対という話ではありませんが、選手の「チケット販売能力」というのは、主催者からすると、とても重要なファクターの1つなのです。また、興業によっては、選手のファイトマネーが、さばいたチケット枚数(売上)に連動する、ということもあります。つまり、選手にとっても「チケット販売能力」が高いということはプラスになるのです。

 

 

長谷川秀彦選手・アカデミアアーザ・水道橋
 このように考えると、「チケット販売能力」は、「フルコミッション型の保険営業」と似ていると思います。自分から「チケット」という商品を買ってもらう、そして、その売上が自分の収入や出場機会の増加に直結するということです。「チケット販売能力」を「フルコミッション型の保険営業」と同じように考えると、その能力を高めるためには、普段から自分という人間を知ってもらい、周囲の人間と良い関係を作っておくことが大切ということです。普段、何の付き合いも無いのに、いきなり「試合が決まったのでチケット買ってください!」と言っても、それは無理な話ですよね。

 

 

 

 

 つまり、プロ格闘家としては「強さ」と「チケット販売能力」の2つが大事になるわけですが(ちなみに、わたくしの知り合いの選手は、ある団体の主催者から「チケット100枚売ることができれば試合組んであげるよ~。」と言われたこともあるそうです)、では、その「チケット販売能力」を高めるためにはどのようにすれば良いのでしょうか?私は、結局のところ「人脈形成」に繋がってくると考えます。そして、プロ格闘家にとってその人脈形成の場としては、以下の4つが考えられると思います。

 

 

 ①  道場での人脈

 ②  勤務先での人脈

 ③  学生時代の人脈(友人)

 ④  異業種交流会での人脈

 

 

 ①~③については、分かりやすい話だと思いますので省略します。今回は「④異業種交流会での人脈作り」について考えたいと思います。昨今、「朝活」という言葉に代表されるように、様々な場所で異業種交流会や勉強会が開かれています。そして、経営者やビジネスパーソンたちが、名刺交換等して人脈形成に励んでいるわけです。そこで、あるボクシングの選手が、経営者があつまる交流会に定期的に参加し、人脈作りに勤しんでいる・・・なんて話を聞いたことがあります。

 

 

 プロボクサーが異業種交流会に参加・・・、このような話を聞いて、皆さんはどのように考えるでしょうか?私は、良いと考えます。なぜなら、そのような活動は、引退後においてもプラスになるかと思うからです。ただし、この場合は条件があります。それは、現在のプロ格闘家以外の職業(副業)をしっかり持っている、または引退後のライフプランやビジネスプランをしっかり持っていることです。なぜなら、何の目的やビジネスプランを持っていない人と他の経営者の方は付き合ってくれないと思うからです。

 

 

長谷川秀彦選手

 異業種交流会に参加するといことは、ハードルが高く誰にでもできるといわけではないかもしれませんが、ここで私が言いたかったことは、プロ格闘家は、自分自身が商品であるという意識をもつことが大切であるということです。現役時代から、応援してくれる人(チケットを買ってくれる人)や、引退後もつきあっていける人を真剣に、意識して作っていく必要があると思います。

 そして、そのためには「自分自身が商品である」という意識が根本に無いとダメだと思うのです。 あるプロ総合格闘家が、「プロ格闘家は、強いだけではダメ。神輿に担がれる存在でなければダメなんだ。タレント性も必要なんだ。」と言っていました。非常に適格な表現だと思いました。強いだけではダメ、周りの人間に応援されるような、魅力的な存在にならないとダメというわけですね。

 

 

 では、具体的に何をすれば良いのでしょうか?それには、何も特別なことは必要はないと思います。まず、きちんと挨拶ができる、感謝の気持ちを伝えることができる、常に前向きな意識を持つようにするといった普段の心がけ…当たり前といわれるようなことを、当たり前にできる人間性がとても大事だと思います。

 

 

 元楽天監督の野村氏が著書でこう言ってました。


「人間的成長なくして技術的進歩なし。」私はいつも選手にそう言っている。仕事を通じて人間は成長し、成長した人間が仕事を通じて世のため人の為に報いていく。それが人生であり、人がこの世に生を受けることの意味だ。すなわち、人生とは人と生まれる、人とあいて生きる、人として生かされると私は理解する。

 

野球選手は、引退後の人生の方が長い。したがって、引退後の人生を視野にいれながら日々を送る必要がある。その時になっても遅いのだ。解雇されてはじめて、「引退後のことを考えなかったのか?」と後悔する選手を何人も見てきた。現役のころから副業に精を出せといっているのではない。野球以外の世界に放り出されても生きていけるだけの常識と覚悟を身に着けておくことが大切である。そのときに何よりも問われるのが人間性なのだ。」

 

 

 このお話は、プロ野球選手だけに当てはまることではありませんよね。プロ格闘家にも同じことがいえるのだと思います。その人の普段の心がけや行動が、人間性を高めていくと思います。強くなるために練習するのと同じくらい、自分自身が商品であるという意識に基づいた、日々の振る舞いが大事だと思います。

 

 

 今回は、「チケット販売能力」について書きましたが、やはり、その能力を高めるには、意識して人脈を幅広く作っていくことが必要だと考えます。そのためには、まず「自分自身が商品である」という意識をしっかり持ち、良い人間関係を作っていくことが大切です。そして、その時に問われるが「人間性」だと考えます。その「人間性」を高めるためにも、日々の行動をしっかりと自覚していく必要があるでしょう。

 

 

 長谷川選手、ありがとうございました!次回、登場していただくプロ格闘家は、ブラジリアン柔術世界選手権2010黒帯ルースター級BEST8の実績をもつブラジリアン柔術家の澤田真琴選手です。よろしくお願いいたします。

 

 

コラム一覧

第12回・総合格闘家・長谷川秀彦選手≪第3話≫≫≪第14回・ブラジリアン柔術家・澤田真琴選手≪第1話≫

 

 

2012年06月01日(金)

FP社会保険労務士事務所 柔コンサルティング

代表 平野 厚雄